読んでつくる知の体系

読んだ本、お勧めしたい本を紹介。ノンフィクションが多め。

時代の波に呑まれないために 『世界で通用する「地頭力」のつくり方』山中俊之

「ガラパコス化」という言葉を知っていますか?

独自の方向で多機能・高機能化した製品やサービス、海外進出やM&Aに消極的な企業、排他的で規制の多いマーケットなど、国際標準からかけ離れている日本の産業の現状を批判的に表した新語。大陸から隔絶された環境下で、生物が独自の進化を遂げたガラパゴス諸島(エクアドル)の生態系に重ね、2007年ごろから広く使われるようになった。  コトバンク参照

日本とは特殊な国で、周り一面海に囲まれていて、他国とあまり接してこなかった歴史が長いゆえ、何も意識せず過ごしていると、この「ガラパコス化」が自然と起こってしまうのです。

本書ではそんなガラパコス化した日本人を、世界のどこでも通用する人材となるべく、「情報」「知識」「ワークスタイル」「コミュニケーション」「オフ」「英語」の観点からまとめたものです。

 

 

2章で紹介されている「STEMを学ぶ習慣」がとても興味深かったです。

STEMとは

S=Science 科学

T=Technology 技術

E=Engineering 工学

M=Mathematics 数学

の頭文字をとってまとめた言葉で、2000年代に米国で広まった教育モデルです。

サイエンスやテクノロジーの変化は著しく、最先端の事例や理論に追いつくことが求められます。世界で活躍するグローバルな外国人は、このSTEMを少なからず他人に説明できるレベルまで勉強しているのだそうです。「この分野は自分には関係ない」「このテーマは特に学ぶ必要がない」と思うことを避け、森羅万象に好奇心を持ち学ぼうとする習慣をつけるべきだと。何から学んでみたらいいのかわからない場合は、このSTEMの中から気になった分野の入門書から読んでみて、そこから考えを深めたり、他の分野に派生したりすることをお勧めします。

 

 

技術革新、規制緩和によって、「人・モノ・カネ・情報」が国境を越えて行き交うようになった時代、現在の日本はグローバル化されて世界に開かれていると考えがちですが、まだ半ば鎖国状態にあります。

 1853年、ペリーが来航しても、江戸幕府は未来永劫続くとほとんどの人は思い込んでいました。しかし、ペリー来航からわずか15年で260年続いた江戸幕府は滅んでしまいました。現在、多くの日本人も幕末の日本人同様、「まぁ、なんとかなるでしょ」とグローバル化と、今勢いのあるAI化の動きをさほど深刻にとらえていないかもしれません。しかし現在おとずれようとしている2つの黒船、グローバル化とAI化について十分に理解し、何らかの対策を練らねば、時代の波に呑まれてしまうでしょう。グローバル化とAI化によって仕事を失ってしまうのではなく、自らの市場価値をあげて、日本だけではなく、世界で通用する人材になる必要かあります。そのヒントが本書には書かれていました。