読んでつくる知の体系

読んだ本、お勧めしたい本を紹介。ノンフィクションが多め。

『植物は<知性>を持っている 20の感覚で思考する生命システム』


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植物について考えてみよう。おそらく大半の人が「口もきけず動きもしない、私たちの世界の調整品」に過ぎないと思うことだろう。私たちが生きる上で役に立ち、魅力的ではあるが、地球上の生物の国では二級市民にすぎないとみなしているのだ。本書『植物は<知性>を持っている』は、人間の驕りという高い垣根を越える手助けをするであろうし、何もかもがこれまでと違う世界へと誘ってくれるだろう。

 

植物は知性を持っているのか?問題を解決する能力はあるのだろうか。周りの環境や他の植物、動物、高等動物とコミュニケーションをとっているのだろうか?それとも、受動的な生き物で、感覚を持たず、固体として自発的に行動することも、社会的に行動することも、まったくないのであろうか。この問いに答えるには、古代ギリシャにさかのぼる必要がある。さまざまな学派の人たちが、日々同じような議論をしていた。そのひとりアリストテレスは「魂をもつものと魂をもたないものとの相違をもっとも顕著に示すと考えられているのは、次の二つの点、すなわち動(運動変化)と感覚することである。」と考え、当時の技術を用いてこの定義を裏付けた。植物を「魂(生命)をもたないもの」と考えたのである。

このアリストテレスの考えは、のちの西洋文化に多大な影響を与えた。哲学者たちは、植物を「動かない」ものとみなし、詳細に観察する価値はないと考え続けてきたのだ。

 

そんな時代背景のさなかでも、チャールズ・ダーウィンのように、植物学に熱心に取り組む人がいた。なぜか。それは植物に未知の可能性を感じ取っていたからであろう。

”この生命観には壮厳さがある。生命は、もろもろの力と共に数種類あるいは一種類に吹き込まれたことに端を発し、重力の不変の法則にしたがって地球が循環する間に、じつに単純なものからきわめてすばらしい生命種が際限なく発展し、なおも発展しつつあるのだ。とダーウィンは語る。

 

チャールズ・ダーウィンと息子フランシス・ダーウィンの登場以降、植物学の研究も大きく発展していく。人間の持っている感覚、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」を植物も同じように持ち、本書のタイトルにもあるように、さらに15の感覚をあわせ持つのだ。

たとえば植物は、湿度計のようなものをそなえていて、地面の湿り具合を正確に測定でき、かなり遠くにある水源も感知できる。動くことのできない植物ならではの感覚だ。

他にも、重力を感知する能力や、磁場(これは成長に影響を与える)を感知する能力。空気中や地面にふくまれる化学物質を感知し、測定する能力もある。

この驚異的な能力を発揮して、さまざまな分野で私たちにかけがえのない恵みをお耐えてくれる。人間にとって非常に有害な汚染物質を無害化し、土と水をきれいにしてくれる植物の能力は、さまざまな汚染除去の技術に用いられる。

 

植物<人間の構図を見直し、植物は知性の研究のための重要なモデルを提供してくれる。知性という観点から無視され続けてきた植物に光を当てることによって、植物を含んだ知性概念の発展を期待できた。