読んでつくる知の体系

読んだ本、お勧めしたい本を紹介。ノンフィクションが多め。

ようこそ身体心理学へ『動きが心をつくる』春木豊


スポンサーリンク

医学の分野で脳の研究が盛んになってきた。脳のことがわかれば、すべてが明らかになると考えている人もいる。たしかに現代の脳科学の進歩には目を見張るものがあり、心の活動に伴う脳の変化を逐一画像で見せてくれる。そのため、心の動きもまた、脳によって説明できると思われるようになってきた。

 

本書では「心身相関」という二項関係に、「動き」という要素を加えた「相互に影響を及ぼす三項関係」を生み出す。決して奇をてらった内容ではなく、身体心理学者の大家がまとめただけあり、とても説得力がある。

筆者はレスポンデント反応とオペラント反応の両方の性質をあわせ持つ「レスペラント反応」という言葉を創作し、体と心に影響を及ぼすことができる重要な反応を見つけ出す。

レスペラント反応の種類には、呼吸反応、筋反応、表情、発声、姿勢反応、歩行反応、対人距離反応、対人接触反応、とにわかれてる。読み終わった後でも、僕が実際意識して継続しているのが、”呼吸反応”だ。

 呼吸は生理的な反射という限界はあるものの、意志的に操作できるために、自分にあった呼吸法を創り出せれる。昔から呼吸法として知られているのは、「丹田呼吸法」ご存知の通り「腹式呼吸」だ。呼吸の属性で見ると、腹式呼吸は「呼息」「腹息」「長息」にわけられる。

本書のデータから、長い呼気が血圧を下げるのに効果的であり、ゆっくりとした呼気が生理的安定をもたらしてくれる。

腹息は胸息に比べて、肺活量が大きくなり、新鮮な酸素の吸入量が多くなる。

また、たくさん息を出すためには、短い呼気で一気に出すこともあるが、長息の方が多くなる。

そして➕α、ゆっくりとした呼気、あるいは呼気後、すぐに吸気に移るのではなく、吐ききった後、しばらくそのままでいるというポーズのある呼吸法が、ストレス軽減につながり、生理的な安定をもたらしてくれる。

これは実際続けてみて、今まではストレスになるような刺激を受けても、何も感じなく、心が高い位置で一定に保たれている気がした。

 

仮定や推測で語られる部分がなく、実証的な研究に基づき、思わず納得してしまう文章で書かれている。本書では身体心理学の研究を明らかにすることで、脳一元主義が中心となっている現代において、身体の動き、感覚と言ったものが、私たちの気分や感情に大きな影響を与えていることを再発見できる。そんなきっかけを与えてくれた本書『動きが心をつくる』オススメです。