読んでつくる知の体系

読んだ本、お勧めしたい本を紹介。ノンフィクションが多め。

人はいままで読んだ本でできている 『教養読書』福原義春

私たちはいま、人がどう生きてきたかを本によって知り、何千年も積み上げられてきた知性を学び、その体験や、いかに多様な思想を持つか、いかに想像と創造の能力を持つかなどのすべてを知ることができるようになった。 資生堂の代表取締役会長を務め、生粋の…

時代の波に呑まれないために 『世界で通用する「地頭力」のつくり方』山中俊之

「ガラパコス化」という言葉を知っていますか? 独自の方向で多機能・高機能化した製品やサービス、海外進出やM&Aに消極的な企業、排他的で規制の多いマーケットなど、国際標準からかけ離れている日本の産業の現状を批判的に表した新語。大陸から隔絶された…

読書はしないといけないのか?『死ぬほど読書』丹羽宇一郎

今年の3/8朝日新聞に掲載されたある大学生の言葉。 大学では教育学部ということもあり、教育や社会一般に関する書籍を幅広く読むようになった。だが、読書が生きる上での糧になると感じたことはない。役に立つかもしれないが、読まなくても生きて行く上で問…

読知体 読んでつくる知の体系

ブログのタイトル「読んでつくる知の体系」。 このタイトルは、『本を読む本』を読んでいるときに、パッと思い浮かんだ言葉です。 「読んだ本の知識を、自分の頭の中で体系化していきたい。」そう思って、ブログを始めました。 目指す読書スタイル 皆さんは…

悪魔の口づけ『キス・キス【新訳版】』ロアルド・ダール

ロアルド・ダールという作家をご存知ですか? 児童書の分野で、『チャーリーとチョコレート工場』を書かれたのは実はこの人。ティム・バートン監督の映画が日本でも大ヒットしましたね。 他にも『007は2度死ぬ』の脚本も手がけたり、そして今回紹介する短編…

子は親の鏡『子どもが育つ魔法の言葉』ドロシー・ロー・ノルト

子どもは、いつも親の姿勢を見ています。ああしなさい、こうしなさいという親の言葉よりも、親のありのままの姿の方を、子どもはよく覚えています。 本書は「子は親の鏡」という世界で愛され子育てバイブルとなった詩を、一行ごと取り上げ、子育てで何が大切…

生まれか、育ちか、それとも『子育ての大誤解』ジュディス・リッチ・ハリス

親は子どもの性格の形成に、重要かつ長期的な影響を及ぼすと考えられている。親が愛情をかければ良い子が育ち、育て方を間違えば子どもは道を踏み外す、そんな「子育て神話」に重圧を感じながら、子育てをしている人が多いのではないだろうか。 そんな子育て…

ようこそ身体心理学へ『動きが心をつくる』春木豊

医学の分野で脳の研究が盛んになってきた。脳のことがわかれば、すべてが明らかになると考えている人もいる。たしかに現代の脳科学の進歩には目を見張るものがあり、心の活動に伴う脳の変化を逐一画像で見せてくれる。そのため、心の動きもまた、脳によって…

休むとは自分の時間をつくること。『自律神経が整えば休まなくても絶好調』小林弘幸

あなたは、休むことをどのようにとらえているでしょうか。 ぐっすり眠ったり、旅行に行ったり、のんびりしたり...まずはこういったことを思い浮かべるのではないかと思います。しかし、本当はもっと多彩な休み方があり、あなたはそれを見逃しているために、…

道のりの違いを楽しむ 『作家の履歴書』

小さい時から物語を書くのが好きで、作家になった人。 初めから作家になりたいなど思ってもみなかった映画監督志望の彼が、運命と呼べる小説と出会い、作家になった人。 作家というゴールに向けて、様々な道筋をたどってきた21人の作家の、「仕事を志した…

最悪の人生、やり直せるのか?『復讐者マレルバ 巨大マフィアに挑んだ男』

1980年代から90年台にかけてシチリア・マフィアの主流である、コーザ・ノストラに反旗を翻し、数年間で300名以上の犠牲者をともなう抗争を引き起こしたマフィアがあった。スティッダだ。 本書はそのスティッダのヒットマンとしてコーザ・ノストラの…

平均とは幻想『平均思考は捨てなさい』トッド・ローズ

タイトル『平均思考は捨てなさい』はなんとも強い主張であるか。人は自分の意見とは反する物事を、否定しようとする時に強い感情がこもるが、本書もタイトル通り”平均”なるものをバッサバッサ斬り倒していく。 平均主義の台頭 平均身長、平均点、平均年収か…

指示待ち人間をつくらない『自分の頭で考えて動く部下の育てかた』 篠原 信

上司の悩みを聞いていると、「部下がなかなか育たない。」「自分の頭で考えたり動いたりする意思をちっとも感じない。」自分で考えて行動できないことが、悩みのタネとなっているようだ。 しかし筆者の篠原さんの周りには、自分の頭で考えるスタッフや学生さ…

公共交通から考える『ドイツのコンパクトシティはなぜ成功するのか』村上敦

日本のほとんどの地域で、自動車を主体として交通を組織していればOKという時代はすでにない。2025年には団塊の世代が75歳を超える。年齢別で見るとマイカーの運転を諦めざるおえなくなる時代が到来するのだ。 本書では、今後も進展してゆく人口減少、…

大好物『「森の人」が食べるブドウの味』篠田節子

タイトルを見て、以前に読んだ www.kusyan.com と似たようなジャンルだと思い即購入。 ボルネオや熱帯雨林の文字が書かれているとついつい読みたくなってしまう。行ったことこそないが、読んでいると頭の中で妄想が広がっていく。大好物だ。 小説家である筆…

45年前をそのままに『本の瓶詰』樋口伸子

エッセイ、国内書評、海外書評で構成されている本書は、樋口伸子さんが本をめぐるコラムや文を45年間、新聞に掲載されてきた記録である。今まで書かれたすべてが載っているのではなく、あくまでも切り抜きから選ばれた、文としては小さくまとまっているが…

ときたま文学『愛のゆくえ』 リチャード・ブローティガン

今年、村上春樹の新刊『騎士団長殺し』が書店に並び、生まれて初めて村上作品を読んでから小説を読む機会が増えた。小説を毛嫌いしていたつもりはなかったけど、 「 ノンフィクション > 小説 」 という関係を頭の中、無意識でつくっていたのかもしれない。 …

視点を変えて読み解く 『明治維新という過ち』 原田伊織

「薩長が近代を創った=正 旧幕府軍=悪 という薩長史観」がまかり通っている、僕自身もその一人だったし、疑いもしなかった。司馬遼太郎さんの作品や他の小説家が書く物語が事実であり、史実であると思い込んでいる人も多いことだろう。 「勝てば官軍」、そ…

『伝えることから始めよう』 髙田 明

「北の町から南の町まで 素敵な夢を届けます 心休まるゆとりの生活 電話一本かなえます ジャーパネット♪ ジャパネット〜♪ 夢のジャパネットたかた」 1度は聞いたことがあるはずこの歌詞。今回紹介するのは2014年に売上額が1500億円を超えた「ジャパ…

『プレ・シンギュラリティ』 齋藤元章

「人工知能・AI」という言葉がメディアに掲載されない日がないほどになり、日増しにその存在感も大きくなってきた。社会問題の中でも取り上げられることも多くなり、ここ最近で大きな関心を持たれる分野になった。本書は『エクサスケールの衝撃』の内容を半…

『生物進化とはなにか? 進化が生んだイビツな僕ら』 伊勢 武史

生物進化とは何か。 「サルから人間が生まれた」や、「下等な生き物が高尚な生き物になっていくこと」など考えられることは多い。よくあるこういう説明には、実は結構大きく深刻な誤解が含まれている。わかっているようでわかっていない、それが生物進化です…

『グリム童話と森 (ドイツ環境意識を育んだ「森は私たちのもの」の伝統)』 森 涼子

始まりは「森」だった。 「幾つかの大きな森が今後5年以下に死んでしまうだろう。これを救うことはできない。」 1981年の夏、ゲッティンゲン大学土壌学教授ウルリヒの談話の一部。この言葉がマスコミに取り上げられ、「森の死」がその後20年間にわた…

『木版画を読む』

” 文字をさげすむ者がいるならば あるいは文字を読めぬ者がいるならば 木版画のなかに自分の姿を見ればよい。 自分が誰で、誰に似て、 何が自分に足りていないか、木版画で眺めなさい。” この詩はセバスティン・ブラントの傑作『阿呆船』の序章の一部である…

『読書論』 小泉信三著

”人生は短く、書物は多い。一生のうちに読みうる書物の数は知れている。それを思えば、いつまでも手当たり次第に読んでいるわけにはいかない。どうしても良書の選択が必要になる。何をいかに読むべきか。” 今回も古い「読書論」の本を読んでいく。この本は戦…

『 森は怪しいワンダーランド』

世界各地の森林を訪ね歩き、いろいろな体験をしてきた筆者。「森林ジャーナリスト」として、森で起きた不思議な体験、仰天した出来事、森に関する怪しい常識や似非科学などなどを、失敗談や与太話を含めて紹介していく一冊。 筆者が森林に興味を持ったのは、…

『サーチ・インサイド・ユアセルフ』

最近テレビや書籍で目にするようになった”マインドフルネス”。 その火付け役になった書籍がこの本だと僕自身勝手に思っている。 なぜGoogleの社員は楽しく創造的に働き、柔軟性を持ち、優れた成果をあげられるのか?その鍵を握っているのが独自の研修プログ…

『ほめると子どもはダメになる』

榎本博明 2015/12/20 「ほめて育てる」とか「叱らない子育て」といった標語をしょっちゅう耳にするようになった。その手の子育て本の代表作のひとつである『尾木ママの「叱らない」子育て論』では、ほめられればだれだって嬉しいものだということを強調して…

『新訳 君主論』

マキャヴェリの『君主論』ほど、時代を越えて、各国の為政者やその周辺に生きる知識人に衝撃を与えた書物はあるまい。しかし実際に、この本のページをめくることなく、悪徳の書というレッテルから、先入観をもっての予断でしかない。いわゆる「マキャヴェリ…

『本を読む本』

本書『本を読む本』は1940年米国にて発行された。以来年ごとに、広く米国に愛され、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語に翻訳される。本書が日本に届いたのは1997年のことだ。 タイトルにもあるように、本を読む人のための…

『星空の演出家たち 世界最大のプラネタリウム物語』

年間50万人の見学者が訪れる名古屋市科学館のプラネタリウム。1962年に開館し、2011年にわずか3年という短期間の工事で世界最大のプラネタリウムにリニューアルした。新聞の「おすすめのプラネタリウム」ランキングで、2度も日本一に選ばれたこ…